「オタクの聖地」とも呼ばれ、日本のサブカルチャーをけん引してきた東京の秋葉原と池袋の明暗が分かれている。インターネット通販の普及で、店舗の撤退や縮小が相次ぐ秋葉原に対し、再開発が進む池袋は若い女性を取り込み活況だ。

1990年代半ばから2010年代前半に生まれた「Z世代」の取り込みの成否が背景とみられ、秋葉原も新たな仕掛けづくりを急いでいる。

8月31日、同人誌販売の「とらのあな」が秋葉原A店など国内6店舗のうち5店舗を閉じた。アニメグッズを販売する「アニメイト」も1月、秋葉原に2カ所あった店舗を1カ所に統合した。

「オタクショップは新型コロナウイルスの流行前から苦しい状況にあった」。消費文化に詳しいニッセイ基礎研究所の広瀬涼研究員は指摘する。ネット通販や受注生産が一般的になり「わざわざ店舗に行ってまで買い物をする理由が希薄になっていた」という。

「メルカリ」に代表されるフリマアプリの急速な普及で、流通の少ない「掘り出し物」さえも手軽に入手できるようになった。ただでさえ衰退傾向にあるなか、コロナ禍に伴う外出自粛が決定打となったという。

もっとも「とらのあな」の運営会社を傘下に持つユメノソラホールディングス（千葉県市川市）自体は業績を伸ばしており、今後はネットを中心としたサービスを強化するという。

秋葉原が男性オタクの聖地とすれば、池袋は女性オタクの聖地といわれる。池袋のオタク文化は「乙女ロード」と呼ばれるアニメ関連店などが集積した通りに端を発し、再開発に伴い東池袋へと広がった。

メインの客層はZ世代の女性で、男性同士の恋愛を描いたBL（ボーイズラブ）系の作品や男性声優、アニメ原作のミュージカル俳優を指す「2.5次元俳優」などに熱を上げる。

作品とコラボしたカフェも企画され、行列をなすファンの姿が見られる。「とらのあな」の店舗も唯一残ったのが池袋の1店舗だった。アニメイト池袋本店も販売フロアを拡大して23年にリニューアルオープンする予定だ。

地元の豊島区も女性がくつろげる空間作りに取り組んできた。女性用の公共トイレを増やし、オープンカフェを併設した公園も複数整備した。区の担当者は「好きな作品について話したり、（応援対象の）推しの商品を紹介し合ったりする若い女性の姿を公園でたくさん見るようになった」という。

秋葉原も手をこまぬいているわけではない。10月27日にはメイドカフェやアイドルの運営会社など秋葉原の観光を支える企業と観光関連団体が、既存の作品からオリジナルのイラストなど二次創作をするクリエーターの活動を共同で支援する「AKIBA3.0構想」を公表。クリエーターと版権元で収益を配分する仕組みづくりや秋葉原独自の暗号通貨の発行などを計画している。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65740120U2A101C2L82000/